伝奏記 社会科授業づくり奮闘記

某中学高校教師の「こんな授業をしてみました!」という社会科授業づくりブログです(/・ω・)/教師修業は果てしなく。日々精進…!

大航海時代

単元「大航海時代

 

本時の目標:世界の一体化を促したものは何か を説明できる 

 

世界史で扱う単元。大航海=冒険というロマン溢れる印象なのか、生徒たちの食いつきもいい。これを更に深い学びにつなげたい。

 

※必ず日付、単元名、本時の目標、教科書の該当ページを黒板に書きます。

「今何やってるの?」「何の話?」「今日は何の勉強をするの?」といった疑問(声には出さないが、授業中にわからなくなる生徒もいるので)を解消するためです。

生徒は一度何やっているかわからなくなると、そこで集中力が切れます。

授業では前年度地理の授業で使用した地図帳を、引き続き使用しています。

世界史は地図帳とセット。

 

 

 

【説明】

〇今日は大航海時代のお話。15世紀ごろから人々は海に出ていったんだ。

 ※説明の時に板書もしています。

 

【発問1】

〇人々は何を求めて海に出ていったんだろうか?

・ワンピースなどが流行っているので、思い思いの答えが出てくる。

 

【作業】

〇では、ここである曲を聴きます。

・歌詞カードを配布して「コンドルは飛んでいく」のCDを流す。

※このとき、配る歌詞カードは2人(3人)で1枚にします。1人1枚にしてしまうと、ずっと歌詞を見てしまうので。2人でシェアすると、そこに会話が生まれます。

2人だと考えやすいし、こちらも発問がしやすくなります。

 この歌にはいくつか訳があるのですが、今回は吉田秀士氏訳の歌詞を使用します。

                                     

1.

大空に今日もまたはばたく 一羽のコンドルが(アー)   

どこからかあらわれて アンデスのやまあいを飛んでいます(アー)

 

◇太陽の栄える国 豊かなこの地に  

宝をもとめて 白人が攻めてきました(アーアー)

 

2.

殺された王は灰の中から コンドルに蘇えりました(アー)

空高くコンドルは国を守るでしょう いつまでも(アー)   

◇(くりかえし)

 

飛べ飛べコンドル 飛べよ 果てしない空を

アンデスのやまに影を落として 裏切られたインカの  笛の音かなし

自由のため死ねと  パチャママの教え(アーアーアー)

 

アンデスの女神

                                     

 

【発問2】

〇この曲は知ってる?

・最近の高校生は知らない子が多いようです…。

 小学生の時に聞いたという子もいました。

 

〇答えは「コンドルは飛んでいく」だ。小学生の時に聴いたことある人もいるんじゃないかな。

 

【発問3】

〇この曲の舞台となっているのはどこだろう?

・答えは南アメリカインカ帝国アンデスの~、インカの~、という部分から推測できます。難しければヒントを出す。

 

〇舞台は南アメリカにあったインカ帝国だ。

 

【発問4】

〇では、このインカ帝国はどうなった?

・太陽の栄える国 豊かなこの地に 宝をもとめて 白人が攻めてきました~、

 殺された王は~、という一文から、インカ帝国が白人に滅ぼされたことがわかる。

 

【発問5】

〇白人とはどこの国の人か?

・答えはスペインだが、この歌詞だけから推測するのは難しい。それでも子どもたちは「アメリカ!」「イギリス!」など、いろいろな答えを言ってくれる。

 

【発問6】

〇白人(スペイン人)は何を求めて南アメリカまで来たんだろう?

・その理由は、宝をもとめて 白人が攻めてきました~、という部分からわかる。

 

【発問7】

〇では、宝とは何だろう?

・自由に答えさせる。「お金!」「食べ物!」「黄金!」などさまざま。

答えは香辛料。

前年度、地理の授業でこの単元に少し触れたので、覚えている生徒もいました。

 

【説明】

〇そう。答えは香辛料だ。白人たちはなぜ香辛料を求めたんだろう?

・ヨーロッパは寒い。ヨーロッパでは家畜を育てている。でも冬になると寒くて家畜のエサ(牧草とか)が育たない。養いきれない家畜をどうしたかというと、肉にして塩漬けにして保存したんだ。でもこの塩漬け肉を食べるとき、においがきつかった。だから香辛料をかけて香り付けをしたんだ。味も良くなるからね。

こうしてヨーロッパの人々は香辛料を求めて海に出たんだ。人々を海に駆り立てたのは、黄金といった宝じゃなくて、香辛料だったんだね。

※授業では黒板に絵を描いています。

 

【説明】

〇こうしてヨーロッパの人々は海に出たんだ。その代表国がスペインとポルトガル

 

【発問8】

〇香辛料は、どこで手に入るのだろう?

・「インド!」という意見が多数。ヨーロッパ人たちは香辛料を求めてアジアを目指した。

 

【発問9】

〇なぜ陸地でアジアを目指さなかったのか?

 

【作業】

・黒板に地図を貼り、スペインとポルトガルがとった航路を記入する。

陸地にはオスマン帝国があったため、宗教問題などから陸のルートをとることができなかった。スペインは西へ、ポルトガルは南へ航路をとった。ここでアフリカ最南端の喜望峰にも触れたい。

 

【説明】

・ここで探検家・航海者に触れる。

コロンブス(イタリア)、ヴァスコ=ダ=ガマ(ポルトガル)、マゼラン(スペイン)。

 著名な航海者たちなので、生徒たちも名前は知っているが、出身地までは知らなかった。コロンブスはスペインから西へ西へ航路をとり、アメリカ大陸を発見した。しかしここをインドと勘違いした。香辛料を求めてアジアに向かっているので、なぜ彼がアメリカ大陸をインドと勘違いしたのかは、ここにある。

前年度の地理の授業でも触れており、アメリカ大陸の先住民をインディオと呼ぶところからも、コロンブスがインドを目指していたことがわかる。

コロンブスの出身はイタリアのジェノヴァだが、出港はスペインのパロス港)

 

【作業】

〇ここでクイズ。

・カードを配る。例によって2人で1枚。

                                      

 アメリカ大陸発見500年記念 NISSANコロンブス・クイズ

日産から5万円をど~んと100名様にプレゼント!

 

 500年前、未知の黄金の国「ジパング」を目指し、大いなる夢とロマンをもって大航海に旅立ったコロンブス。現代にも、そんな精神の持ち主はいっぱいいるはずです。

 日産は、新しいカーライフへ出発する心の冒険者たちを応援します。

あなたも、日産コロンブス・クイズで夢にチャレンジしてください。

 

日産コロンブス・クイズ

 次の〇の部分に、数字を3文字入れてください。

 コロンブスがちょうど1492年、サンタ・マリア号でアメリカ大陸を発見してから、来年でちょうど〇〇〇年目です。

(『朝日新聞』1991年12月1日に掲載された記事)

                                      

 

【発問10】

〇この記事の中でおかしなところが1か所ある。それはどこだろう?

・答えは「発見」というところ。先住民が住んでいるので、「到達」が適切である。

 コロンブスアメリカ大陸を発見したことは非常に意義のあることだが、先住民にとってはどうだっただろうか。実際のこのあと白人たちの侵略や迫害、持ち込まれた伝染病などで先住民たちは苦しむことになる。コロンブスたちの功績が残っているのは彼らが「英雄」だからである。立場が違えば歴史的な視点も変わるということを問いかけたい。

 

【説明】

〇さて、スペインではアメリゴ=ヴェスプッチをアメリカ大陸に派遣して、開拓をはじめた。アステカ王国マヤ文明インカ帝国が滅ぼされたとされているよ。

また、ヨーロッパ人は鉱山で銀を採掘したり、カリブの島々ではサトウキビなどのプランテーションを経営したんだ。

〇ヨーロッパ人によるアメリカの植民地化の結果、アメリカの先住民は激減。

迫害や過酷な労働、ヨーロッパから持ち込まれた伝染病(インフルエンザ)などが原因だ。インフルは人が死ぬ病気なんだよ。気をつけたいね。

そして、労働力としてアフリカ大陸から多くの黒人が南アメリカにやってきたんだ。

※前年度地理で学習した「人種のるつぼ」につながる話。覚えている生徒もいて、「あー!そうだったね!」と盛り上がりました。

 

【説明】

〇航海を通じて、国と国、人と人との交流が生まれた。このように、航海術と交易によって、世界は一体化に向かったんだ。世界の一体化を促したものは、非常に価値のあった香辛料と、銀だったんだね。

 

ここで終わってもいいが、もうひとつ踏み込みたい。

 

【説明】

・資料を配布。船員の日誌と、ヨーロッパ人が想像して描いた、異国の人々の絵である。

 

資料:船員の日記

 

セビリャの港を出発、アメリカ大陸を南下して海峡を通過し、「おだやかな海」(太平洋)に抜けた。

 

 

 

三ヵ月と二〇日の間、新鮮な食べものはなにひとつ口にしなかった。ビスケットを食べていたが、それは粉くずといった方がよく、虫がウジャウジャわいていて、鼠の小便のにおいがムッと鼻についた。

古くなりすぎて黄色く腐った水を飲んだ。また帆に張りつけてあった牛の皮さえ食べた。

 

 

資料:ヨーロッパ人が想像して描いた、異国の人々

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〇当時ヨーロッパではキリスト教教会の言うことが絶対だった。資料からわかるように、世界のことは全然わからない。もしかしたらこんな怪物がいるかも…と不安があっただろう。ヨーロッパの人たちの大航海は、まさしく未知への挑戦だったんだ。

 

【まとめ】

〇本時の内容を文章化させる。難しい生徒には感想を書かせる。

 

 

 

作業や説明を含めると、2時間ほどかかりますが、生徒たちはしっかりと聞いていました。「CD流すの!?」というスタイルに驚く生徒も。

「今度は何をしかけてくるんだろう」という謎?を残して授業は終わりました(笑)

 

 

 

 

 ■参考文献

〇続・100万人が受けたい「中学歴史」ウソ・ホント?授業

河原和之 明治図書 2017年

〇子ども熱中!中学社会「アクティブ・ラーニング」授業モデル

北村明裕 明治図書 2015年