伝奏記 社会科授業づくり奮闘記

某中学高校教師の「こんな授業をしてみました!」という社会科授業づくりブログです(/・ω・)/教師修業は果てしなく。日々精進…!

EUの課題

EUの課題」

 

EU統合の歴史的背景、抱える課題について学習する。

 

 

 

教室に手作りの段ボール箱を持ち込む。手作り感が良い。

箱には「なんじゃろな?」と書かれている。

生徒は「何するの!?」注目している。

 

 

ミニゲーム:「箱の中身はなんじゃろなゲーム」

 

手だけを入れて、箱の中身を当てるゲーム。挑戦者を募ると、多くの手が上がる。

挑戦権を手に入れた生徒は大喜びだった。

 

「箱の中身が何か、触った感触をみんなに伝えてあげてね」

と伝える。キャーキャー言いながら、感想を述べている。

 

中身はコンビニで売っているチョコレート菓子。

当てた場合は拍手が起こる。

 

少し回りくどい気もするが、こういうミニゲームを行うことで、チョコレートに視点がいく。何に注目すべきかが明確になる。

 

次にチョコレートの入った2つのカップを取り出す。

 

発問:「食べてみたい人いる?」

 

もちろん多くの手が上がる。

事前に管理職に許可を得ることは必須である。

アレルギーにも配慮がいる。

 

挑戦権を得た2~3人の生徒は大喜び。

2種類のチョコレートを食べる。

1つは甘い。もう1つはすごく苦い。

「甘い!」「うえ~!」と言いながら、クラスメイトに感想を伝えている。

 

大方、試食タイムが終わったところで話しだす。

 

「これが、EUの課題の1つです」

「我々にはどちらもチョコレートだけど、ある国にとっては、どちらかはチョコレートじゃないんだ。」

 

生徒たちは、「え?」という表情を見せる。

価値観が揺さぶられているのがわかる。

 

次のエピソードを紹介する。

EU統合の際、ベルギーは、カカオマス100%のものでないとチョコレートではないと主張している。しかし、この主張は認められなかったんだ。」

「統合とはいい言葉だけど、複数の国が基準を一緒にするってすごく難しいんだ。チョコレート1つとっても、考え方が違うんだよ」

 

生徒は納得した顔をしていた。

 

「では、今回はEUの抱える課題を見ていこう」

 

次の文章を表示する。

発問:「「ヨーロッパの統合は、??と??を可能にした」。??にはそれぞれどんな言葉が入る?」

 

前時に、EU誕生の背景には、戦争の反省があることを学習しているので、「平和」と答える生徒が多い。しかし、もう1つの??はわからない。

 

「正解は「平和」と「繁栄」だ」

 

発問:「では、本当に「平和」と「繁栄」が可能になったのだろうか?」

次の写真を見せる。

 

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発問:「この人は何をしている人?職業は?」

 

生徒たちは口々に答える。

 

正解はホームレス。

 

正解を表示するときに、「ほんとに~?」と言いながらヒントを表示していく。

 

?????

 

生徒「ホームレスやん!」

 

????ス

 

生徒「ほらー!」

 

?-??ス

 

?-ム?ス

 

このあたりで爆笑が起こる。

 

ホーム?ス

 

ホームレス

 

「はい、正解はホームレスでした~」

 

発問:「ヨーロッパには、ホームレスが多い。なぜだろう?」

 

EU加盟国の間では経済格差が起こっていることを学習する。

 

次の表を配る。

これは、ユーロ圏の国民1人当たりの所得を100とした場合の数値である。

 

ルクセンブルク

263

ドイツ

123

フランス

109

イタリア

101

ギリシャ

46

ポーランド

38

ルーマニア

27

ブルガリア

21

 

作業:これらの国は、北・南・西・東ヨーロッパのどこに属しているだろうか?

 

この作業から、比較的、西ヨーロッパが豊かで、東ヨーロッパが貧しいことがわかる。

 

西ヨーロッパ(資本主義)と、東ヨーロッパ(共産主義)の説明をし、取り組みの違いから、格差が生まれたことを説明する。

 

発問:「自分が東ヨーロッパに住んでいたら、どう思う?」

 

生徒「いやだ」

生徒「西に行きたい」

 

生徒たちは、EUのメリットの1つ、「人の移動の自由」を学んでいるので、東ヨーロッパの人が、西ヨーロッパに移住してくることに気づく。

 

発問:「引っ越してきて、すぐ仕事が見つからなかったら?」

 

ここまでの流れから、移住してきても仕事がすぐに見つからなかった人がホームレスになってしまうこと、多くの人が移住してくることで、元々住んでいた人たちの仕事を奪ってしまうことを学ぶ。

 

イギリスはEUを脱退してしまったが、生徒たちはその理由の一端も掴んだようであった。

 

「一言で「統合」といっても難しいんだよね。でも、EUはそういう課題を乗り越えて世界をリードするチームになろうという、崇高な理念を持っているんだ」

という話をして授業を終えた。