伝奏記 社会科授業づくり奮闘記

某中学高校教師の「こんな授業をしてみました!」という社会科授業づくりブログです(/・ω・)/教師修業は果てしなく。日々精進…!

民主主義の成立

「民主主義の成立」

 

今回は現社です。年間計画によってはここから現社の授業に入るパターンもあるのではないでしょうか。

 

民主主義の成立についての授業ですが、そこに入る前に、

民主政治とは何か、民主主義とは何か、

民主主義ってすばらしいものなのか、などを考えていきます。

 

ここでは「多数決」を取り上げます。民主政治の代表例です。

ここに潜んでいる”矛盾”を突き詰めていきます。

 

 

発問:「日本の政治って何主義?」

 

民主主義ですね。

そして政治は民主政治です。

 

「では、民主主義ってなに?」

 

これがアンガイ答えられない!

これも、生徒たちの”常識”を揺さぶる一手です。

 

民主主義とは、簡単に言うと、

みんなのことはみんなで決めよう

というもの。

 

国民の意思に基づいて行われる政治を、民主政治をいいます。

 

民主政治では、話し合って色々なことを”多数決”で決めていくケースが多い。

多数決は民主政治の代表的な例です。

 

【ペア討論】

資料を配布します。

「次のパターンA・Bを読んで話合おう」

 

パターンA--------------------

国男が住む家に、3人組の悪党が押し掛けてきた。

悪党1「おい!この家から出ていけ!」

国男「何を言っている!ここは俺の家だ!」

悪党2「何ぃ!?」

悪党3「じゃあ多数決で決めるぞ!」

      :

悪党1「多数決の結果、ここは俺たちの家だ!」

f:id:Watawata:20200817192232p:plain

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

パターンB--------------------

30階建てのマンションのエレベーターが故障した。

各階の代表者が集まって会議が開かれた。

「急いで修理しなければ」

「修理費の負担はどうしよう」

「みんなが平等に負担すべきでは」

「あ、私は1階に住んでいるので、エレベーターは使わないのですが…」

「1階に住んでいる人も修理費を負担すべきでは?」

「そうだな!多数決の結果、みんなで負担しよう」

f:id:Watawata:20200817192252p:plain

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

パターンA・Bも多数決で物事を決めています。

どちらも民主的です。でも、何かオカシイ。

 

多数決は生徒たちにとっても身近なものです。

体育祭や文化祭、クラス役員などでも多数決で決めるケースが多いです。

 

この辺りで、生徒たちは民主政治の”矛盾”に気づきだします。

 

【動画視聴】「ざわざわ森のがんこちゃん『さんせい?はんたい?』」

NHK for school)

f:id:Watawata:20200817192354j:plain

がんこちゃんはみんな知っているようです。がんこちゃん最強。

以下ネタバレ。

 

話の内容としては、

・クラスでお楽しみ会をすることになった。

・リレーをやろうと、いう案が出た。

・カタツムリのツムは、折り紙がいいと言った。

・多数決の結果、リレーをすることになった。

・「みんなで決めたんだから、しょうがないよ」とツムに言うがんこ。

・後日、がんこはケガをしてしまう。

・学校に行くと、休み時間にサッカーをしようということになる。

・がんこがケガでできないと主張したが、多数決の結果、サッカーをすることになる。

・ひどい!と怒るがんこ。

・ここで気づく。「本当にみんなで決めたのかな?」

・お楽しみ会の決め方も、ツムの気持ちを考えたのか?と振り返る。

・がんこ、みんなでもう一度話し合おう、と提案する

・話し合った結果、みんなが満足するお楽しみ会ができた。

 

発問:「今回のがんこちゃんたちの、トラブルの原因は?」

 

お楽しみ会の内容を、反対の人もいたのに”多数決”で決めてしまったこと。

多数の陰に、誰かが損をしてしまう。これって、民主的なのか。

 

発問:「では、これ(多数決)は民主的か?」

 

教室がシーンとなります。考え込んでいるようですね。

 

しかし、日本では至ることろでこういうシーン(多数決での決定)が見られます。

 

発問:「では、がんこちゃんたちはどうやってこのトラブルを乗り越えたか?」

 

みんなが楽しめるよう、工夫したんですよね。

 

 

資料配布

かこさとし「こどものとうひょう おとなのせんきょ」より

f:id:Watawata:20200817191313j:plain

 

このページ、本質を突いていますよね。

 

 

現在、多くの国で民主主義の則った政治が行われています。

 

「みんなのことはみんなで決めていく」

 

これってとてもすばらしいこと。

 

でも、それって危なさも含んでいる。

 

では、そんな民主主義。

いつ手に入れた権利なのでしょうか。

 

 

前置きが長くなりましたが、

授業ではここから民主政治の成立に入ります。

 

 

いきなり民主政治の成立の歴史を勉強しても良かったんですが、

ホッブズやルソーなど、おもしろいです)

みんなが「当たり前」と思っている民主的な部分の矛盾を突くことで、

全体的に「考える」シーンが増えないかなと思って実践してみました。

 

頭がアクティブになっていれば、それは立派なアクティブラーニング型授業です。