民主主義の成立
「民主主義の成立」
今回は現社です。年間計画によってはここから現社の授業に入るパターンもあるのではないでしょうか。
民主主義の成立についての授業ですが、そこに入る前に、
民主政治とは何か、民主主義とは何か、
民主主義ってすばらしいものなのか、などを考えていきます。
ここでは「多数決」を取り上げます。民主政治の代表例です。
ここに潜んでいる”矛盾”を突き詰めていきます。
発問:「日本の政治って何主義?」
民主主義ですね。
そして政治は民主政治です。
「では、民主主義ってなに?」
これがアンガイ答えられない!
これも、生徒たちの”常識”を揺さぶる一手です。
民主主義とは、簡単に言うと、
「みんなのことはみんなで決めよう」
というもの。
国民の意思に基づいて行われる政治を、民主政治をいいます。
民主政治では、話し合って色々なことを”多数決”で決めていくケースが多い。
多数決は民主政治の代表的な例です。
【ペア討論】
資料を配布します。
「次のパターンA・Bを読んで話合おう」
パターンA--------------------
国男が住む家に、3人組の悪党が押し掛けてきた。
悪党1「おい!この家から出ていけ!」
国男「何を言っている!ここは俺の家だ!」
悪党2「何ぃ!?」
悪党3「じゃあ多数決で決めるぞ!」
:
悪党1「多数決の結果、ここは俺たちの家だ!」
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パターンB--------------------
30階建てのマンションのエレベーターが故障した。
各階の代表者が集まって会議が開かれた。
「急いで修理しなければ」
「修理費の負担はどうしよう」
「みんなが平等に負担すべきでは」
「あ、私は1階に住んでいるので、エレベーターは使わないのですが…」
「1階に住んでいる人も修理費を負担すべきでは?」
「そうだな!多数決の結果、みんなで負担しよう」
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パターンA・Bも多数決で物事を決めています。
どちらも民主的です。でも、何かオカシイ。
多数決は生徒たちにとっても身近なものです。
体育祭や文化祭、クラス役員などでも多数決で決めるケースが多いです。
この辺りで、生徒たちは民主政治の”矛盾”に気づきだします。
【動画視聴】「ざわざわ森のがんこちゃん『さんせい?はんたい?』」
(NHK for school)
がんこちゃんはみんな知っているようです。がんこちゃん最強。
以下ネタバレ。
話の内容としては、
・クラスでお楽しみ会をすることになった。
・リレーをやろうと、いう案が出た。
・カタツムリのツムは、折り紙がいいと言った。
・多数決の結果、リレーをすることになった。
・「みんなで決めたんだから、しょうがないよ」とツムに言うがんこ。
・後日、がんこはケガをしてしまう。
・学校に行くと、休み時間にサッカーをしようということになる。
・がんこがケガでできないと主張したが、多数決の結果、サッカーをすることになる。
・ひどい!と怒るがんこ。
・ここで気づく。「本当にみんなで決めたのかな?」
・お楽しみ会の決め方も、ツムの気持ちを考えたのか?と振り返る。
・がんこ、みんなでもう一度話し合おう、と提案する
・話し合った結果、みんなが満足するお楽しみ会ができた。
発問:「今回のがんこちゃんたちの、トラブルの原因は?」
お楽しみ会の内容を、反対の人もいたのに”多数決”で決めてしまったこと。
多数の陰に、誰かが損をしてしまう。これって、民主的なのか。
発問:「では、これ(多数決)は民主的か?」
教室がシーンとなります。考え込んでいるようですね。
しかし、日本では至ることろでこういうシーン(多数決での決定)が見られます。
発問:「では、がんこちゃんたちはどうやってこのトラブルを乗り越えたか?」
みんなが楽しめるよう、工夫したんですよね。
資料配布
かこさとし「こどものとうひょう おとなのせんきょ」より
このページ、本質を突いていますよね。
現在、多くの国で民主主義の則った政治が行われています。
「みんなのことはみんなで決めていく」
これってとてもすばらしいこと。
でも、それって危なさも含んでいる。
では、そんな民主主義。
いつ手に入れた権利なのでしょうか。
前置きが長くなりましたが、
授業ではここから民主政治の成立に入ります。
いきなり民主政治の成立の歴史を勉強しても良かったんですが、
(ホッブズやルソーなど、おもしろいです)
みんなが「当たり前」と思っている民主的な部分の矛盾を突くことで、
全体的に「考える」シーンが増えないかなと思って実践してみました。
頭がアクティブになっていれば、それは立派なアクティブラーニング型授業です。